studio Odyssey




スタジオ日誌

日誌的なもの

2015.12.04

メガネvsラガン4

Written by
しゃちょ
Category
読み物
Tags

 爆発はオチだけではなく、しょっばなっていうのもあるんだぞ。覚えておけ。前回のひきってやつだ。と言う訳で──
 大爆発!
 弾け飛ぶ教室のドアから、
「くっ、ぶちきれてやがる......! こんの変態メガネが!!」
 廊下に転がり出てくるトーちん。
「全部トーちんのせいじゃない!」
 遊人。そして、
「ちょっと! なんであたしまで巻き込まれてるわけ!?」
 霰の三人。
 はてさて。
「トーちんンンんん!!」
 三人を追うように、禍々しいオーラを纏った加賀が、廊下に姿を現す。
「トーちんを殺して、抱きしめて頬ずりして、一週間くらい一緒にごろごろしてから、オレも死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
 反射するメガネのレンズに、その瞳の奥は見えない。だが、確実に言えることは、変態。狂気。キモい。
 加賀のメガネに、パワーがリチャージされる。
「また撃ってくる気か!? 遊人! 盾だ!」
「はい!」
「へっ......?」
「「妙技! 身代わり入道雲!」」
「あたしィー!?」
 爆発。
 場面転換にも使える。有能。

 時は少し巻き戻り、クラスメイトたちは吹っとんで、遊人、霰も倒れているあたり。前回のラストシーン。
 対峙する、加賀とトーちん。
「キミの取れる最後の選択肢は、ふたつ......ここでボクに殺されるか......ボクの愛を受け入れるか!!」
「その二つしかないのか......」
「ない!」
「ならば......俺も男だ!」
「トーちん......まさか、ボクの愛を......!」
「ああ......俺も男だ......腹を据えよう......」
「トーちん...」
「だが、断る!」
「ならば死ねい!」
 打てば響くとは、まさにこの事かと言うほどに全力で、加賀、メガネからビーム!
 巻起こる大爆発。吹き飛ぶ教室の椅子机、壁ドア。流石に、これにはトーちんも──
「......トーちん」
 風が、爆煙を散らす。
 加賀は眼鏡を上げつつ、呟く。
「ボクには、わかっているよ......この程度で、ボクの愛を受け止めたトーちんが、やられるはずがないと言うことくらい」
「さすがだな、加賀......」
「きゅう......」
 と、呻いたのは誰であろう、右手をピースにして水平にし、右目にぴしっと添えた状態のまま、黒焦げになっている遊人だ。
「前回ラストシーンを改変されたよー......」
「神子遊人、敵ながら、一度ならず、二度までもトーちんを護るとは......見上げたものだ」
「毎回だから、もう何度目かわからないよ」
「くっ......加賀......とうとう、ぶちきれたか......」
「しかも、無視だよ......さすがの僕も、そろそろピンチだよ」
「いや、お前なら、あのビームは、あと5発は耐えられる」
「なんで僕ばっかり......入道雲さんだっているじゃん」
「うるせぇ、あいつは──! なんだ、一応、お前よりは、盾にするのに、躊躇みたいなモノがある」
「え!?」
 と、霰が飛び起きた。
「トーちん、そんな......」
 口許に手をあて、まんざらでもないのか......
「ああ、お前は──遊人と違って、どれくらいの強度なのか、まだよくわからない」
「強度ってなんだよ! やっぱり盾扱いなのかよ! ばかやろー!!」
「な、バカってなんだ!」
「そうだそうだ、トーちんのばーか!」
「あん? 言うに事欠いて、俺に馬鹿だと、この馬鹿、馬鹿、大ば──!」
「ふむ......」
 と、一人蚊帳の外だった加賀が、すちゃりと銃を取り出し、遊人に向けて撃った。ぱあんと言う銃声と共に、遊人の胸から鮮血が舞う。
「......あ」
 どさりと倒れた遊人の下に、血の海が広がっていく。
「ゆう......と......?」
 凶弾を放った加賀は、落ち着きはらった声で、言った。
「ふ......トーちん、酷いな、君は。僕の気持ちを知っていながら、まだそんな男の娘といちゃつくんだね。わざわざ胸を撃ってあげたというのに、カタチ、大きさ、その他の一切の描写の無かった、ナイ乳男の娘なんかと!」
「トーちん! あいつ、巨悪よ!」
 トーちんに駆け寄り、霰。思うところがあったらしい。
「いくら神子遊人とは言え、ビームはともかく、実弾には、そうは耐えられまい」
「それって、逆じゃないんだ......」
「うるさいぞ、愚物が!」
 加賀が霰を睨むと、メガネがぎらりと光った。
「なんであたし!? ちょっと、トーちん!」
「うわ、馬鹿! やめろって! 服を掴むな!」
 放たれるビーム。それを右手ではじくトーちん。
 屈折したビームが別の場所に炸裂し、少爆発を起こしていた。
「あぶねぇ......」
「はじけるんだ......」
「危ないよー、弾く時は、方向確認してよー、ボクに当たるかと思ったよー」
 ぬっと現れた遊人の恨み節。
「おお、わりい、遊人」
「死んでなかったの!?」
「大丈夫、モデルガンだから」
「ペコちゃんフェイスやめろ」
「明らかに死んじゃう系描写だったじゃない!?」
「一話で、トーちんが大丈夫って言ってたから、大丈夫!」
 てへっと笑う遊人に、加賀。
「これが信頼か......」
「なんで! 信頼パワーって、現実改変すらするの!?」
「信じれば」
「なに格好良くニヤってんのよ! びっくりしすぎて、きゅんするわ!」
「やはり......お前たち全員をここで殺さない限り、トーちんの命を奪うことは、不可能なようだな......」
「話進めてるし! っていうか、どうしてあたしまで!? あたし、一応、メガネなんだけど!?」
「ツッコミいないと、話すすまねーからじゃね? ナレーションも最近、サボり気味だし」
 すまない。
「すまない、お前にも死んでもらうぞ、入道雲霰」
 と言う訳で、
「トーちんを殺して、抱きしめて頬ずりして、一週間くらい一緒にごろごろしてから、オレも死ぬうぅぅうぅぅぅぅ!」
「んな変態的な事されてたまるか!」
「愛のために、死ねぇ!」
 加賀、何度目か、メガネからビーム!
「遊人!盾!!」
「はい!」
「へっ?」
「「教員にも縛られず、中略、以下略、委員会会長バリアー!!」」
「えぇぇええ!?」
 炸裂。


 と、言うわけで、冒頭に戻る。
「危ないでしょ!当たったら、痛いじゃない!」
 霰が喚く。
「大丈夫だ! あと三回はいける!」
「高性能だね!」
「嬉しくないわ! ってか、今、あの変態、超本気だったじゃない!」
「いざとなったら、ノーダメ隠しスキルの、真剣白刃メガネ取りとか使えよ」
「ないわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「役たたずめ......」
 逃げる三人を追う加賀が、ゆらりと姿を現す。
「あの攻撃を防ぐとは......さすがは入道雲 霰。伊達にメガネではないな」
「入道雲さん、だて眼鏡だったの?」
「違う!」
「くそうが、やるなら、こっちも本気だ!」
 突然、立ち止まるトーちんに、「え?」と霰も立ち止まる。
「何を......?」
「学習しないとー、入道雲さんー」
 遊人はさっさと行く。
「え?」
「くらえ!」
 霰の制服の襟首を掴んで、
「くたばれ変態! アラレボンバー!!」
 トーちんは彼女を、変態に向かって投げつけた。
「って......きゃぁぁぁぁぁぁああああ!」
 スカートを抑える辺りが、彼女らしいと言うべきか。
 そしてそれは、変態の頭にクリーンヒットした。
「お、おぅ!?」
「よし、遊人、逃げるぞ!」
「あいあいさー」
「お、おのれ......ま、待て......」
「きゅぅ......」


 廊下を走り、トーちんと遊人は、角を折れた先の多目的教室に飛び込んだ。
「よし、ここで、教室の動向をうかがうぞ」
「うん」
 教室二つ分の多目的教室のドアに背をつけ、
「......ったく、このままじゃ、教室にも入れねぇ......幸い、まだ一限の先生は来てないみてーだし、欠席にはなってないが......」
「全遅刻無欠席のネタ、まだ生きてたんだ」
「あん!? あたりめーだろうが。この、目からビーマーが」
「そんな言われよう、初めてだよ」
「しかし、クラスメイトも、原因不明の失踪だし、これは学級閉鎖ということで、チャラになるかもしれんな」
「学級崩壊の間違いじゃ?」
「なるほど。じゃあ、先生の忌引きって事で」
「死んでない!......よねぇ?ボブ先生」
「しかし......静かだな」
 それはフラグだ。
 突如、教室の窓ガラスがばーんと割れ、飛んだ。
「なにっ!?」
 そこに現れたのは、
「はーっはっはっはっはっはっはー!」
 変態だ!
「ここ、三階だぞ?」
「些細な問題だよ、トーちん」
 うん、今までのやり取りからしたら、本当に些細な問題だな。
「だが、あえて言おう! 何故と問われれば、答えよう! なぜならば、俺様は、王だから!」
「なんか、加賀くんに、新しい設定が生えた!」
 今更、驚くほどの事か、遊人よ。
「......王?」 
「おう!」
 殴りてぇ......
「ふ......王を前にして、声も出ないようだな」
「呆れてるんだ」
 おう。
「加賀くん、いつから王になったの? 知らなかった。お祝いしようよ!」
「黙れ、だぉぼ! いつから、ではない。王とは、生まれながらにして王なのだ」
「どうしよう、トーちん。ちょっとよくわからない」
「いつもの加賀じゃねーか?」
「それもそうか」
「もしくは、入道雲が頭にあたった影響でおかしくなったか?」
「ふ......確かにあれは今までにないパターンだった故、多少の驚きは禁じえなかったが、だが、今考えてみれば、アレはトーちんなりのメッセージ!! いわば照れ隠し!」
「うん、やっぱり加賀くん、ちょっとよくわからない」
「まぁ、貴様のような奴にはわからんだろうが、俗に言う『あんたの事、好きな訳じゃないんだからね!?』という、逆説的なラヴ・メッセージというやつだ」
「わかった、加賀。いっぺん人生やり直そう。な。今ならまだ間に合う。いっぺん死んで、人生やり直せ」
「それは、何に間に合ってるんだろう?」
「あぁ、トーちんの為ならば、何度でも生まれ変わって、何度でも、ラヴをはぐくもう! さあ!トーちん! メイク、ラヴ!」
「く!? こ、この力は!?」
「あのメガネくいくいしてるの、なんかのパワー的なものなの!?」
「メガネ時空に引きずり込まれるぞ!?」
 メガネ時空......それは──!


 半裸のトーちんが、半裸の加賀の顎をひいて、呟く......
「加賀......俺、本当は、おまえのことが好きで好きでたまらないんだ......むしろアレだ......ラヴ?」
「トーちん......」
「この気持ちは、おまえの形状記憶合金フレームよりも固く、この、薄型プラスチックレンズよりも透明で、ピュアーな、気持ちだよ......」
「あっ、あ~、レ、レンズに指紋がつくよ、トーちん」
「ふっ、付けてるんだよ、大樹」
「やめ、やめてくれ......トーちん!」
「見た目だけ女と言う理由で......お前を選ばなくて、ゴメンな。大樹」
「オレも......あんな男の娘より、可愛くなくてゴメン......オレがもっと可愛いなら、トーちんを苦しませずに済んだのに......」
「何言ってるんだ、大樹。本当のお前は、あんな男の娘より百、いや1億万倍は可愛いよ」
「そんなっ......信じられないよ......トーちん」
「なら、信じさせてやるよ......」
「あっ、そ、そこは......」
「いけない子だ......ここをこんなにして」
「トーちんがやったんじゃないか」
「こんなにレンズに指紋を付けて......オレのこと、見えてるのか?」
「見えてる、見えてるよ......」
「なら、いいじゃないか。ぺたぺた」
「あっ、あっ」
「ぺたぺた」
「あっ、あっ」
「ぺたぺた」
「あっ、あっ」
「ぺたぺたぺたりん」
「あ~~~っ!」


「キモいわぁ!!」
 霰の怒号。続いて、メガネからの痛烈なフラッシュ!
「なにィ!?」
 メガネ時空が崩壊する! ありがとう!
「く、は!? あ、危ない所だった......」
 汗だくのトーちんが、我に返り、呟いた。
「あ、ありがとう、霰」
「な、なによ! 別にあんたの為じゃないわ! 単にキモ過ぎて、虫唾が走ったからよ!」
「読者的にもありがとうだったと思うよ、入道雲さん!」
「ああ、マジでだ。これが、話に聞くメガネお得意の、精神攻撃か......」
「加賀くん、恐るべし......」
「ふん、ようやく解ったか、神子遊人。これが我ら、メガネの真の力だ」
「おのれ......メガネ......」
「なんという、妄想力......」
 呟き、ふと、遊人は疑問を口にした。
「入道雲さんも、そうなの?」
「は?」
「だって、メガネだし」
「あ、そうなん?」
 メガネの力=妄想力と定義したらしい。そうなのか?
「ばっ......そんな事!」
 霰は顔を真っ赤にして否定する。が、
「そうだぞ」
 加賀はさらりと言ってのけた。
「加賀ぁぁぁぁぁぁあ! てめぇ!」
「そんなことよりも、だ」
「待ちなさい、加賀。今、誤解されたから。すっごく誤解されたから。全面的にあんたのせいで」
「貴様が誰にどう思われようと、俺様的にはどうでもいい。そんなことよりも、入道雲 霰。いや、メガネの力を持つ者よ。王である俺様は、先程から気になっているのだが......」
「なによ」
「お前は、どちらの味方なんだ?」
 核心を突いたな。むしろ、お前らに敵味方の概念があるのかという疑問もあるのだが。
 遊人が、うーん、と、
「あー、メガネvsラガンで言えば、ボクたち、敵同士だねー」
「だな......まぁ、何度も助けられてはいるが、実際、戦ってもいるしな」
「うむ。貴様の行動は、同じメガネとして、非常に不可解だ。王たる俺にも、たてつくし」
「な......敵とか味方とか......あ、あんた達だって、仲いいじゃない!」
「ボクたちと加賀くん?」
「そうよ! なんだかんだ言って、なんか、じゃれ合ってるみたいに!」
「うん。だって、あんまり認めたくはないけど──」
「うむ、非常に不愉快な事実ではあるが──」
「「幼馴染だからね(な)!」」
 ハモるくらいに。
「なにそれ!? そんな理由!!」
「まあ、霰よ、認めたくは無いが、それが事実だ。そして、その事実の上では、いたって普通の人間関係だと思うぞ?」
「まてまてまて。貴方たちは、幼なじみの『あはは~こいつぅ~』で、教室吹き飛ばすわけ?」
「うん」
「まぁ」
「悪気はないんだよ?」
 無いんだ、悪気。
 悪意は満載な気もするけど。
 霰は、至極真っ当に返す。今更感満載である。
「あんたら、おかしいから!」
 満載ではないな、今更感が溢れてる。
 しかし、それを受けた遊人、何を思ったか、
「あー、とかなんとかいって、実は中に入りたいんだー?」
 いや、何も思ってないか。思いつきを口にしただけか。
「なんだ、そうなのか? なら、もっと問答無用に攻撃していいんだな? 霰、お前の耐久度も大体解ったし、ギリギリも攻められるぞ?」
「なんでよ!」
「それが、トーちんなりの愛の表現だからだろう」
「黙れよ、変態」
「あー、加賀くんとトーちんに対する態度が全然違うー。あー、実は、入道雲さんは、トーちんを狙ってるんだ~」
「俺の命か?」
「させんぞ、入道雲 霰ぇぇぇぇぇえ!」
「死ねよ!」
 一閃、メガネフラッシュ。
「ウボァアア!?」
 吹っ飛ぶ加賀。
 転じて、
「ねぇ、どうなのー?」
「どうなんだ? 場合によっては、俺もお前に対する態度を、改めねばならん」
 マイペース。
「う......」
「ねぇねぇ?」
 吹っ飛んだはずの加賀が、霰に襲いかかりつつ、
「どうなのだ、入道雲 霰ぇぇぇぇえ! 貴様、俺が霰と呼ぶとメガネフラッシュのくせに、先程から、トーちんにそう呼ばれてもスルーしてるなあぁぉぁ!」
 加賀の指摘に、霰、一瞬で顔を真っ赤にして──睨んで、口許をわなわなして──フラッシュ!
「ウボァァァア!?」
「おー、今度のは、ずいぶん派手に飛んだな」
「霰ちゃん、顔、真っ赤だよー」
「う、うるさいわね! お黙りなさい!」
 真っ赤だぞ、会長。
「うるさい! ええ、ええ、そうよ、そうですよ! 仲間に入れて欲しいですぅ! この力があって、落ち込んだりもしたけれど、あなた達を見て、ちょっと元気になりましたぁ! 一緒に遊びたいですぅ!」
 おお、会長、テンション上がってきたぞ......
「ええ、ええ、っていうか、ぶっちゃけ、霰って言われても、嫌じゃないですぅ! どきっとしますぅ! 嫌いじゃないですぅ! っていうか、気にしてますぅ! ちょっとイジメちゃうのも、気になってる子にちょっかいかける小学生みたいな心理ですぅ!」
 との言葉を受け、我らがトーちん、
「はっはっは、ちょっとで、ボブ先生を永遠の眠りにつかせるのはどうかと思うぞー」
 ブレないな、この男は。
「死んで......ない......よねぇ、ボブ先生」
「っていうか、ボブ先生なんてどうでもいいのよ!」
 霰、キレっキレ。
「そうよ、あたしにとっては、メガネだラガンだっていうのも、ぶっちゃけ、どうでもいいのよ!」
「根底を覆す発言だ......」
「っていうか、あたしたち、高校生なのよ! あたし、女子高生なのよ! ちょっとは甘い青春の一つや二つ、たしなんでみたいじゃない! したっていいじゃない!」
「はて......甘い要素がどこかにあったか、遊人よ」
「加賀くんの妄想が、ある意味」
「それはやめてくれ」
「そうですぅ! メガネ=妄想力だって言うんなら、妄想だってしますぅ! 好きな人と、手をつないで帰るとか、そういう妄想とかしますぅ! 誰もいない教室で、ちゅーとかしたいですぅ!」
 妄想力の伏線を引っ張ってくるあたり、霰、侮れない......
「きっさまぁ!」
 加賀が吠えた。
「それが、トーちんだというのかぁぁぁぁぁぁぁあ!」
 ブレないな、お前も。
「ってか、生きてた!?」
「うるさい!」
 三度メガネフラッシュ!「ウボァ」もなく吹っ飛ぶ加賀。ちょっと黙ってろ。霰フェースは続く。
「もうやめます。私、やめさせていただきます。今日から私、入道雲 霰は、マイクをおいて、普通の女の子に戻ります」
 そのマイク、どっから出した。っていうか、スポットライトの中でマイク置くな。
「う......裏切ったな、入道雲 霰」
 それほどの信頼もなかったと思うが。
「霰ちゃん......」
 なんで涙ぐんでんだ、遊人。
 そんな遊人に、霰は優しく告げる。
「遊人くん? あなたも、メガネだラガンだなんて捨てて、普通の女の子として生きましょうよ?」
「普通......なのか? いや、そもそも遊人は女の子では......」
「トーちんはああいうけど、私とあなたなら、きっと仲良しユニットになれると思うの。もう、ビームも受けなくてすむのよ? 遅刻も、サボりしないですむわ。エンジョイ学園ライフよ」
「それ、いいなー」
「どうしても敵対するというのなら、私も仕方がないけれど、悪くはない提案のはずよ?」
「んん~」
「どう? 一緒に、女子高生を楽しみましょう!」
「んん~っ......」
 と、眉根をよせて悩んだ挙句、
「そうだね!」
 と、遊人は大きく頷いた。
「ありがとう! 遊人くん!」
「新ユニット爆誕だね!」
「そうね! あえて言うなら......」
「ユニット名は......」
「「メガネ&ラガン!」」
 いきなりキメポーズかよ!? ってか、さっきマイク置いたのに、なんでまた持ってんだよ! しかも二人共だよ! アイドルユニットかよ!?
「つーか、お前ら、普通に仲いいだろ?」
「いいわよ!」
「実はね!」
 ポージングもバッチリだしな。
「ふ......ふっふっふっふっふ......はーっはっはっはっは!」
 地の底から響くような笑い。
「いたのか、加賀......」
「いたとも! そして、王であるこの俺をおいて、なにやら楽しげに話を進め、あまつさえ、この俺様裏切るか、入道雲 霰!」
「もう、あなたなんてしりませんー。王とかメガネとかラガンとか、私には関係ありませんー」
「ボクたち、明日の明星を目指すんだもんね!」
「明星ってたとえが古いな......」
「ふん......まあいい。所詮貴様など、俺様とは違い、委員長+メガネ=萌え、的メガネだったということか......」
「な......なんですって!」
「理解できなかったのか? メガネ委員長属性型メガネ」
「霰は会長だろ?」
 そう言う話ではないと思うぞ、トーちん。
「......まあ、なんでもいいわ」
 いや、出来ればテンション高く行ってほしいです。ツッコミ、こっちだけだと、辛い。マジ頼む。
「いやよ、もう、勝手にしなさい。私はもう、メガネだラガンだには、関わらないです」
 全否定だ!
「ふ......仲間にも裏切られ、トーちんには未だ愛が届かない。もう潮時なのかもしれんな......」
 自嘲し、メガネを上げる加賀。
 ここで加賀まで脱落したら──あ、終わればいいんだから、それはそれで良くないか? オーケー、加賀、脱落しようぜ!
 淡い期待であった。
 くいっくいっと、絶え間なくメガネを上下させる加賀のオーラの色が変わっていく。何か、謎のエネルギー的なものが溜まっていく。
「あの馬鹿......今度は何をする気なんだ?」
「そろそろ、次のつなぎのために、巻いていこうって言うんじゃないの?」
「ふ......そうとも......これで終わりだ、メガネの裏切り者。そして、ラガンの末裔ども!」
 そして加賀は──おでこにメガネを!
「デコデコデコリーン♪」
「そ、その呪文は!?」
「知ってるの、霰ちゃん!?」
「懐かしいなぁ、のんたっく」
「あんた年いくつよ!? って、そんな事はどうでもいいのよ!」
「はっはっはっはっはー! この呪文はなぁ! 友達がいない王様が、『こんな世界滅んじゃえ!』と言う時に使う、究極の呪文だッ!」
「ま、まさか、あんたにそれが使えたなんて......ッ!」
「でも、すごい限定条件下でしか使えないんだね」
「加賀のためだけの呪文とも言えるな」
「言っただろう、我は、王であると! 故に、我のためだけに存在する禁呪すらあるのだ!」
「で、今度はどんな変態技が発動するわけだ?」
「ふふふ......トーちん......一緒に死のう」
「断る」
「だがしかぁぁし! だけれど、But!! むしろ俺様が断る! 今から13分後!! この世界に、ビッグメガネ様が顕現なされる!!」
「ごめん、日本語で」
「英単語、ひとつだけだったよ?」
「そうか? 俺には謎言語にしか聞こえなかったぞ。霰、翻訳」
「そうね、簡単に言えば、空から謎の隕石的なSomethingが、超高速で落下してくる」
「わざわざ英単語入れなくていい」
「隕石?」
「そうね。まあ、サイズが少々、アレなだけで」
「豆芝くらいか?」
「かわいい!」
「月くらいかしらね」
「でかっ!」
「っていうか、どこから出てくるの、それ!」
「それとかいうな、神子遊人! さぁ、出でよ! ビッグメガネ様ァっ!!」
「絶対顔だけだ! ビッグメガネ様!」
「しかも月サイズの!」
「なんで楽しそうなのよ! 世界滅亡の危機なのよ!」
「いや......」
「ぶっちゃけ......」
「「楽しみだし!」」
 ポージングもバッチリだ。
「あんたらはー!」


「おおっと、次回予告ぅ!」
「あ、今回もやるんだ、それ」
「霰ちゃん! もっと乗ってこうよ! ボクたちのユニットの、初仕事だよ!」
「あ、そのネタ、まだ続いてたんだ」
「ついに、キレた加賀くんによって呼び出された、ビッグメガネ様! その姿は、月サイズの、顔だけの謎物体」
「地球に、いやむしろ、居所的にトーちんを狙って落下してくるそれを、果たしてラガンの末裔は阻止することはできるのか!」
「人類の滅亡をかけた、比較的どうでもいい戦いが、ついに終結する! つーか、勝手にかけられた人類の滅亡にしてみれば、はた迷惑なだけだけれど!」
「世界を救う愛を、はたして彼らは見つけ出せるのか!? あれ? そういう話だったっけ?」
「そして、過去から繰り返されてきた、メガネとラガンとの戦いの真実が、ついに明かされる!」
「え? マジで? そんな設定があったんだ!?」
「次回、メガネvsラガン、最終部! はい、みんな、これ読んで」
「えっと──遊人君! 避けて!」
「大丈夫だよ......ボクは......ラガンだから」
「ふははははは! すべては、ビッグメガネ様の意志なのだよ、トーちん!」
「俺のこの目が世界を映す限り、貴様らの自由にはさせん!」
「あんたらまでノッちゃうのかよ!?」 
「次回、『世界を映すもの』」
「まあ、どうせこの予告、全く関係ないんでしょうけどね......」
 今まで関係あった事があったか?


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