studio Odyssey



スタジオ日誌

日誌的なもの

 分厚い鉄の扉が、鈍い音と共に開かれる。
 その音に、私は深い眠りの底から世界に引き戻され、覚醒した。
 扉の向こう、暗い通路の向こうから差し込んでくる光が私の頬に熱を与え、意識をはっきりとさせていく。
 ここは──
 目を細め、私はその向こうを見た。
 影が言う。帽子のつばに手をかけて。
「どうも」
 そこにいたのは大魔道士──補佐見習い候補──のネリさんだった。ネリさんは帽子に手をかけたまま私に向かって、
「お久しぶりです」
 なんて言って、声をかけた。
「……どういうこと?」
 聞きつつ、私はゆっくりと立ち上がった。そのついでに状況を確認しようと周りを見回すと、ここはどうやら牢獄のようだった。簡素なベッドと机と椅子が一組。部屋の隅に壺。マジか。
「状況がわからない」
 言いつつ、扉の方へと進んでいく。
「でしょうね」
 などと言いつつ、ネリさんは道を空けた。扉の向こうは石造りの薄暗い一本道で、ここはどこかの地下だろうか。その狭く暗い通路を照らすのは、ネリさんについて来ていた二人の兵士らしき人が手にしていた大きなランタンと、通路に等間隔に置かれた蝋燭の灯りだけだった。
「どうぞ」
 と、ネリさんに剣を差し出されて気づく。腰に剣がない。どころか、服が、質素な貫頭衣を腰紐で結んだだけの、大分みすぼらしい格好じゃないか。一体何があったのだ?
 ハテナハテナで、とりあえず剣を受け取り右手に持つ。
 そして、私は聞いた。
「さっぱり訳がわからないのだけど?」
「おっと、左手は使わないでください、まあ、多分使えませんけど」
「どういうこと?」
 首を傾げつつ、手のひらを上に向けた左手に意識を集中すると、ぱちぱちと赤い光が少し弾けて──けれど、そこに私の石は姿を現さなかった。
「あれ?」
「それも含め、ご説明いたしますので、どうぞ」
 そう言って、ネリさんは私を促した。
 ああ……なんとなく、想像がついた。
「なんかしたね? この世界の神様たちが。私に」
「そういう言い方をしないでください。マジで」

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