studio Odyssey



スタジオ日誌

日誌的なもの

 その何かは私たちに気づくと、ゆっくりと振り向き、眼球のない眼窩を私たちに向けた。
 冥府、135階。
 その階層に唯一存在する神殿の最奥に──それはいた。
 冥府の女王。
 アーオイルが錬金術から生み出した、古き神のなれの果て。
 かろうじて人の身体を保っているそれが動くと、ぼろぼろと蛆の湧いた肉が辺りに落ち、腐臭がぞわぞわと足下を流れてきた。
「ひでぇモンだな……」
 剣を構えた私の隣、アルさんが呟く。
「出来損ないの賢者の石に死すらも奪われ、神にもなれず、ただただ冥府に蠢くもの……」
「引導を渡してやるのが、せめてもの情け」
 答え、レイさんは構える。
 そして──
 眼前、私たちに振り向いたそれが、冥府を震わす悲鳴のような咆哮をあげた。声に、頭がぼこぼこと内側から沸騰するように弾け、雷を纏った黒いヒトガタの何かがもぞりと姿を現す。続いて弾けた胸から、腹から、足の間から両手、両足と──計八体のおぞましいヒトガタが次々と姿を現し──顔に当たる部分の半分以上を占める口のような穴の奥から、怨嗟の声を轟かせた。
「いくぞ!」
 剣を振るい、アルさんは叫んだ。

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