studio Odyssey



スタジオ日誌

日誌的なもの

「ま、まあ、あれです。どうぞ」
 と、私は皆を促す。
 夕暮れ、城壁から少し離れた、街道はずれの森の入り口。小さな湖の畔に、バンガロー風の家。私の生家だ。もう戻ることはないだろうと思っていたけれど、まさか、そう思って出かけたその日の内に、帰ってくる事になろうとは。
「おじゃまします~」
 と、私の後ろに続くのは、曰く、ヒーラーロールの導師、エルさん。
「あ、室内は一緒になんですね~」
 ……はて? 何と比較してなんだろうか。まあ、いい。
 私はバルコニーから、庭の方を見て、
「どうぞ? 遠慮はしなくていいですよ?」
 と、声をかけたが、そこにいた男三人、
「まったく、遠慮する気などないが」
 腰に細剣を吊した剣士、アルさんこと、アルベルトさん。
「我々のことは、お構いなく」
 漆黒のフルプレートに身を包んだ、暗黒騎士、レイさんこと、レイシュさん。
「こんなもんでいいか?」
 両腰に短剣を何本もぶら下げている、ローグ、ダガーさん。
 何やら、庭の地面をならして、いそいそとキャンプの準備を始めている。
「あの……みんな寝るスペースくらい、ありますけど……」
「いいんですよ~、ほっといて~」
 エルさんは、相変わらずのほわんほわんな感じで、言った。
「アレらは、好きでキャンプするんですから~」
「ほぅら! 見てください! アルさん、ダガーさん! これが幻の食材、ライゼルの肉ですよー!」
「おおー!」
「なんの肉に近いの?」
「ガゼルに近いそうですが……あいにく本物は食べたことがないので、わかりません」
「おい、アル。かまどいるか? 火は、カルボの木炭でいいのか?」
「いいんじゃね? 遠赤効果で、いい感じになるんじゃね? あ、これ、料理スキルとか、あったりする?」
「ありません! 料理は万人に平等です! プレイヤースキル依存! Dex高いほうがいいとかいう噂はありますが、未検証!」
「ようし、ダガー!」
「まかせろー!」
 ……うん。楽しそうだから、いいんだな。うん、たぶん。

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