studio Odyssey



スタジオ日誌

日誌的なもの



 38歳。無職。童貞。
 童貞は生まれた時からだが、無職は先週からだ。
 激務に次ぐ激務で、とうとう壊れた。身も、心も、なにもかも。
 俺の、16年の社会人生活は、一体何だったんだろうか。何の意味もなかったんだろうか。何も残さなかったんだろうか。いや、金だけは残ったな、使う暇もなかったしな。でも、ただそれだけ。
 一人、夕陽の差し込む、10年近く住んでいる2Kの自室、ベッドの上で、俺は天井を見上げていた。
 動けない。
 動きたくない。
 人生を、振り返りたくもない。
 かと言って、自殺を選択したくもない。事故にでも巻き込まれて死ぬのなら、万々歳だ。突然ガス爆発でもおきないものだろうか。強盗が押し込んできて、いっそ俺を刺し殺してくれないだろうか。
 いっそ──
 口をついて、出た。
「こんな世界、滅んでしまわないだろうか」


「いいね、いいよ、オマエ」
 ケケケ、と笑いながら、それは言った。
 天井に張り付くようにして、バスケットボール大のちんちくりんな生き物がいた。ケケケと笑いながら、それは言った。
「いいね、いいよ、オマエ。そのやる気にあふれた、やる気のなさ。くっだらねー、クソみてーな負の感情」
「なんだ、お前」
「なんでもいいと思っているくせに、どうでもいい事を聞くな。なんでもいいだろ」
 まあ、正直、どうでもいい。
 それは続けた。
「ついにアタマがイカれたと思っているな? いいじゃないか、イカれたついでだ、大将」
 そしてそれは、言った。
「お前に力を与えてやる。この世界を、滅ぼすために──俺と契約して、魔法少女を殺してよ?」

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2016.12.16

ロボットもの

Written by
しゃちょ
Category
読み物
雑記
Tags



「ひとつだけ確認しておく」
 俺は、それに尋ねた。
「彼女がパイロットになったとしても、それは、後から変更可能なんだな?」
 それは答えた。
「問題ない」
「わかった」
 俺は頷き、返した。
「俺がお前にインストールされてやる。それで、お前は動けるんだな?」
「ちょっと! やめてよ!」
 泣きそうになりながら、彼女が言った。
「嫌だよ! なんで私がそんな──!」
「彼は死ぬ。そして、彼の選択を君が否定すれば、彼も、君も、この星の生命体の全てもが、命を失う事になる」
 それは答えた。
「彼の死は、回避できない」
 非情だ。まあ、この出血なら、そう長くは保たないんだろうなという事くらい、俺にもわかる。あと、何分だ? 二分くらいか?
 それは続けた。
「君は、彼の選択を、認めるだけでいい。私のシステムの一部が破損して動かない現状は、彼の意識を上書きインストールすることによって、修復される。私の自我は彼に上書きされ、消えるが、同時に、彼は私のアーカイブへのフルアクセスを得る。彼なら、私をうまく扱えるだろう。大丈夫だ。先にも言ったが、君は、彼の選択を認めるだけでよい」
「なんで──やだよ! 重すぎるよ!」
「君の選択で、彼の死は、多くの命を救うことになる」
「やだよ! なんで私が──!!」
「頼むよ」
 俺は笑って、言った。
「せめて、最後くらい、カッコつけさせてくれよ。嘘でも──彼女、守らせてくれよ」


 その日、俺たちの街に、怪獣が降ってきた。
 それと戦う、ロボットのような、人工生命体と共に。
 俺が、彼女に告白されて、初めてのデートの日に──槍じゃなくて、怪獣と、巨大ロボットが降ってきた。

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2016.12.14

二本

Written by
しゃちょ
Category
日記

 年内に、二本、読み物が公開される設定にしておいた。スケッチシリーズ。

 メガネvsラガンって、もう一年前なんだなぁ。はぇー。

 まぁ、公開される二本は、実に俺っぽい感じの、くだらない感じのショートです。続きは書きません。

 金曜に公開されるはず。

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