2023.01.01
「総員、待避ー!」
最前線で鉱石魔神の猛攻を押さえていたレイさんが、振り向きざまに叫ぶ。
「もー! 無理ー!」
きびすを返し、走り出すニケちゃん。
「おやおや、まあまあ」
と、エルさんはステップを踏みつつ後退。それに続くダガーさん、ネリさんは「こりゃやべぇ」「戦略的転進ですね」と、すたこらさっさ。
「殿、務めます! レイさん先に!」
戦旗槍を大きく振り抜き、聖騎士チロルさんが殿に立って叫ぶ。と、
「くっ! チロルさんが殿だと、あとは任せた! と言って逃げ出しにくい!」
「私ならいいというのですかー!」
はいはい、いつものいつもの。
「だがしかし!」
我が相棒、アルさんこと、アルベルト・ミラルスは言った。
「総員、待避ー!」
無数の、数百という単位に違いないという鉱石魔神の大群に背を向け、私たちはあの要塞遺跡、バリトゥーヤの円形広場から、脱兎のごとく逃げだしたのであった。