「ひとつだけ確認しておく」
俺は、それに尋ねた。
「彼女がパイロットになったとしても、それは、後から変更可能なんだな?」
それは答えた。
「問題ない」
「わかった」
俺は頷き、返した。
「俺がお前にインストールされてやる。それで、お前は動けるんだな?」
「ちょっと! やめてよ!」
泣きそうになりながら、彼女が言った。
「嫌だよ! なんで私がそんな──!」
「彼は死ぬ。そして、彼の選択を君が否定すれば、彼も、君も、この星の生命体の全てもが、命を失う事になる」
それは答えた。
「彼の死は、回避できない」
非情だ。まあ、この出血なら、そう長くは保たないんだろうなという事くらい、俺にもわかる。あと、何分だ? 二分くらいか?
それは続けた。
「君は、彼の選択を、認めるだけでいい。私のシステムの一部が破損して動かない現状は、彼の意識を上書きインストールすることによって、修復される。私の自我は彼に上書きされ、消えるが、同時に、彼は私のアーカイブへのフルアクセスを得る。彼なら、私をうまく扱えるだろう。大丈夫だ。先にも言ったが、君は、彼の選択を認めるだけでよい」
「なんで──やだよ! 重すぎるよ!」
「君の選択で、彼の死は、多くの命を救うことになる」
「やだよ! なんで私が──!!」
「頼むよ」
俺は笑って、言った。
「せめて、最後くらい、カッコつけさせてくれよ。嘘でも──彼女、守らせてくれよ」
その日、俺たちの街に、怪獣が降ってきた。
それと戦う、ロボットのような、人工生命体と共に。
俺が、彼女に告白されて、初めてのデートの日に──槍じゃなくて、怪獣と、巨大ロボットが降ってきた。
ShortCut Link: