studio Odyssey




スタジオ日誌

日誌的なもの

2015.03.05

スケッチ

Written by
しゃちょ
Category
読み物
Tags

 shit!!

 終電逃した。くそが。あれだ、エスカレーターで立ち塞がってたあのおっさんがわりーんだ。くそが。死ね、死ね、皆死んじまえ。

 まあ、グチったところで、何が変わるわけでもねーのはわかってんだけどさ。愚痴も出るわ。

 大きく息を吸って、吐く。ため息。

 朝方は、風に春の香りがした。具体的にいうと、最近鼻をむずむずさせる例のアレ。花粉。なのに、時計の短針が天辺を回った今は、ちょいと寒い。具体的にいうと、先週の俺の懐ぐらい。アレ、給料日前の月末。

 なんだかなー、なんだろうなー、例えにもキレがねーよ、俺。たとえですらねーよ。

 仕方なしに、俺はタクシー乗り場へと向かった。

 駅までと告げて、タクシーに身を滑りこませる。愛想の良くない運転手が、マスクの奥でもごもごと応える。花粉症かね、風邪かね、まあ、話を広げるつもりもないけども。

 スマフォをいじって、時間を潰す。無言の車内。信号待ちに停車した、メーター類の明かりだけの薄暗い車内に、軽いエンジン音だけが、かたかたと響いている。

 大きく息を吸って、吐く。ため息。多分、意味はない。

 窓の外、国道の景色が流れていく。

 なんかなー、なんだろうなー。

 たとえばた。

 このタクシーが、事故ったとする。いや、運ちゃんはたまったもんじゃないだろうが、俺はどうだろう。

 うん、たまったもんじゃないな。

 たとえばた。

 このタクシーか、気づいたら異世界に迷い混んでたとする。運ちゃんはたまったもんじゃないだろうが、俺はどうだろう。不思議タクシー。やべえ、ファンタジー。もしかして、ホラー。

 夜霧がさーっと流れてきて、気がつくと知らない道。あれ?と思って、運ちゃんに声をかける。すると、ゆるゆるとタクシーは停車して、「お客さん...」振り向く運ちゃんがマスクをとって、にたあと笑う口が、耳まで裂けていて──

「お客さん、駅、つきましたよ」

 はっと気づいて、手で口許を拭う。

 やべ、寝てたし。ってか、駅、私鉄側じゃん。JR側だったんだが...いや、まあ、文句は言うまい。

 支払いをすませ、そそくさと降りようとしたとき、「あ、お客さん...」

 運ちゃんが、俺の方に身を乗り出すようにして言いながら、マスクに手をかけた。

「ケータイ、忘れてますよ」

 うん、スマフォね。スマフォ。さっきまで俺が手にしていたスマフォ。それが、シートに転がっていた。

「あ、すみません、ありがとうございます」

 さっとそれを拾って、俺は逃げるようにタクシーを離れた。やべぇやべぇ。アホみたいな妄想が、運ちゃんディスが。まあ、ロックかかってるけどな。

 かたかたかたと軽いエンジン音を残して、タクシーが国道に戻っていく。離れて行く俺。コンビニ寄って、メシ買って、帰って寝るか。

 マスクを取った運ちゃんの口許は、ちょいとばっかし乾燥してて、すこしばっかり割れていた。多分アレ。風邪ひいた時になるアレ。

 帰ったら、イソジンでうがいもしねーとな、と、俺は軽く息をついた。


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コメント[3]

Leaf   2015.03.06 01:07 | 返信

おお……。
まさにオデの文体といえばこの文体ですよ!(*´ω`*)
「なんというか、エッセイ?」シリーズも好きなので、ひさしぶりの雑文と文体に触れてほくほくでしたヽ(。・ω・)ノ゛

お仕事お疲れ様です。ありがとうございました。


しゃちょ   2015.03.06 10:08 | 返信

No.167のLeaf さんのコメントへの返信

サイトみたよー。
なんか、こっぱずかしい感じがしたよ!あの人、そんなに大層な人じゃないよ!


Leaf   2015.03.09 13:17 | 返信

再度のコメント失礼します。

べつにスピットさん個人のキャラに~というのではなく、
素晴らしい作品を読ませていただいたことだったり、ROでも楽しい雰囲気を伝えながら遊んでいた光景のことであったり、
まあ創作者としての、オデの中のひとたちへの尊敬と憧れがあるということですよー(*´ω`*)

サイト見てくださってありがとうございました!


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