shit!!
終電逃した。くそが。あれだ、エスカレーターで立ち塞がってたあのおっさんがわりーんだ。くそが。死ね、死ね、皆死んじまえ。
まあ、グチったところで、何が変わるわけでもねーのはわかってんだけどさ。愚痴も出るわ。
大きく息を吸って、吐く。ため息。
朝方は、風に春の香りがした。具体的にいうと、最近鼻をむずむずさせる例のアレ。花粉。なのに、時計の短針が天辺を回った今は、ちょいと寒い。具体的にいうと、先週の俺の懐ぐらい。アレ、給料日前の月末。
なんだかなー、なんだろうなー、例えにもキレがねーよ、俺。たとえですらねーよ。
仕方なしに、俺はタクシー乗り場へと向かった。
駅までと告げて、タクシーに身を滑りこませる。愛想の良くない運転手が、マスクの奥でもごもごと応える。花粉症かね、風邪かね、まあ、話を広げるつもりもないけども。
スマフォをいじって、時間を潰す。無言の車内。信号待ちに停車した、メーター類の明かりだけの薄暗い車内に、軽いエンジン音だけが、かたかたと響いている。
大きく息を吸って、吐く。ため息。多分、意味はない。
窓の外、国道の景色が流れていく。
なんかなー、なんだろうなー。
たとえばた。
このタクシーが、事故ったとする。いや、運ちゃんはたまったもんじゃないだろうが、俺はどうだろう。
うん、たまったもんじゃないな。
たとえばた。
このタクシーか、気づいたら異世界に迷い混んでたとする。運ちゃんはたまったもんじゃないだろうが、俺はどうだろう。不思議タクシー。やべえ、ファンタジー。もしかして、ホラー。
夜霧がさーっと流れてきて、気がつくと知らない道。あれ?と思って、運ちゃんに声をかける。すると、ゆるゆるとタクシーは停車して、「お客さん...」振り向く運ちゃんがマスクをとって、にたあと笑う口が、耳まで裂けていて──
「お客さん、駅、つきましたよ」
はっと気づいて、手で口許を拭う。
やべ、寝てたし。ってか、駅、私鉄側じゃん。JR側だったんだが...いや、まあ、文句は言うまい。
支払いをすませ、そそくさと降りようとしたとき、「あ、お客さん...」
運ちゃんが、俺の方に身を乗り出すようにして言いながら、マスクに手をかけた。
「ケータイ、忘れてますよ」
うん、スマフォね。スマフォ。さっきまで俺が手にしていたスマフォ。それが、シートに転がっていた。
「あ、すみません、ありがとうございます」
さっとそれを拾って、俺は逃げるようにタクシーを離れた。やべぇやべぇ。アホみたいな妄想が、運ちゃんディスが。まあ、ロックかかってるけどな。
かたかたかたと軽いエンジン音を残して、タクシーが国道に戻っていく。離れて行く俺。コンビニ寄って、メシ買って、帰って寝るか。
マスクを取った運ちゃんの口許は、ちょいとばっかし乾燥してて、すこしばっかり割れていた。多分アレ。風邪ひいた時になるアレ。
帰ったら、イソジンでうがいもしねーとな、と、俺は軽く息をついた。
コメント[3]
おお……。
まさにオデの文体といえばこの文体ですよ!(*´ω`*)
「なんというか、エッセイ?」シリーズも好きなので、ひさしぶりの雑文と文体に触れてほくほくでしたヽ(。・ω・)ノ゛
お仕事お疲れ様です。ありがとうございました。
No.167のLeaf さんのコメントへの返信
サイトみたよー。
なんか、こっぱずかしい感じがしたよ!あの人、そんなに大層な人じゃないよ!
再度のコメント失礼します。
べつにスピットさん個人のキャラに~というのではなく、
素晴らしい作品を読ませていただいたことだったり、ROでも楽しい雰囲気を伝えながら遊んでいた光景のことであったり、
まあ創作者としての、オデの中のひとたちへの尊敬と憧れがあるということですよー(*´ω`*)
サイト見てくださってありがとうございました!
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